留学生便り


留学生便り Vol.4   ベルリン芸術大学

by 寺元嘉宏さん(pf.)
世界各地で勉強している桐朋出身生に、現地の声をききます。

第4回は、ドイツのベルリン芸術大学 Universitat der Kunste Berlin に留学されている、寺元嘉宏さん(pf.)にお話を聞きました。
国家演奏家資格に向けての研鑽に忙しい中、ドイツの教育システムの現況など、とても丁寧に話してくださいました。

Q 入試や就学に関して、どんなことが大変でしたか?

入試や合格後の諸手続きは大変でした。
というのも住み慣れた日本とはやり方やルールも微妙に違うし、
勿論言葉も全部横文字です。

入学手続き、銀行口座の開設、保険、部屋探し、住民登録など、
あらゆることを同時並行でこなさなければならないし、
手取り足取りフォローしてくれる人もいません。 BR>同じ学校の日本人先輩に教えてもらいながら、ようやく生活する基盤ができたという感じです。

Q 寺元さんはDiplom過程を終了なさって、今年からは国家演奏家資格コースに在籍中とのことですが、 これはどういった制度でしょう?

そもそもドイツには現在2つの学位コースが存在します。

まず一つ目がそもそもドイツに古くからある大学制度で、Diplom(ディプロム)とKonzertexamen (国家演奏家資格)のセットです。
Diplomが大学の学士課程に当たり通常最低5年間で取得するものです。 Diplom を修了し、試験に一定以上の成績で合格できれば国家演奏家資格コースに進学することが許可されます。 そして最低2年間の学業の後に、国家演奏家資格が与えられます。

もう一つは最近取り入れ始められた大学制度でBachelor(学士) とMaster(修士)のセットです。
学位取得までBachelor が最低4年間、Masterが最低2年間かかります。

ドイツでは大学制度をDiplom-Konzertexamen の古い体制からBachelor-Masterの新しい制度に変えようとしています。 ドイツの音楽大学では現在この二つが混在している状況で、既に学士と修士の体系しか無い大学もあります。

ベルリン芸術大学の場合両コース存在しますが、もうDiplomは募集していません。
つまりベルリン芸術大学(ピアノ科)で新規受験できる課程としては学士、修士、国家演奏家資格 の三つがあります。

国家演奏家資格コースは、Diplomと同等以上の学歴があれば受験することが出来ます。
つまりDiplomが5年間のコースなので、
例えばBachelor (4年)とMaster(2年)の6年間の学位を持っていればDiplomと同等とみなされ、受験出来るのです。
ドイツ以外の国で取得した学位も、大まかにこのような感じで計算すれば受験資格があるか無いかが分かります。
(ただしこれは学校側の正式な計算方法ではありません。あくまで自分がどの課程にあたるのかという目安程度に考えてください。
最終的な判断は学校側の事務担当者や教授がその都度判断することになります。)

国家演奏家資格コースは(演奏家を育てる目的なので)授業はなく、試験は全て演奏実技です。
数回分のリサイタルができる程度のプログラムを用意し、
その中から審査員である教授がリサイタルプログラムを作ります。
そのリサイタル試験に合格すれば、演奏家資格がもらえます。

Diplom の卒業試験は国家演奏家資格の入学試験を兼ねています。
外部入学志願者は各時代の(近現代、古典派、ロマン派/近現代、現代曲)を含むプログラムを用意して、
その中から試験官が15分選び演奏するのが定例となっています。
プログラムは変わる可能性もあります。
実際のところ、今まで外部の受験生の中で合格した人はいません。

Q なるほど、国家演奏家資格の過程にいきなり入るのは難しそうですね。大学(学士、修士)の入試はいかがでしょう?

入試は現在半年に一回2月と7月に行われており、 申し込みはその時々によるので要項を毎回チェックする必要があります。

語学に関しては申込みの際ドイツ語レベルA2の証明書を添付する必要があります。
大学の規程では仮に合格した場合入学までにB2の取得が義務付けられていますが、 実は裏ワザがあって入学後1年以内に取得すれば許される場合もあります。
先ほどもお話ししたように、 現在募集を行っているのは学士(Bachelor)、修士(Master)、国家演奏家資格(Konzertexamen)のみです。

学士過程の試験ではバッハの作品、古典のソナタ、自由曲を用意する必要があります。
まず一次審査で5分ほど弾くことになると思います。舞台上で先生に指示された曲を弾きますが、 大体の場合は古典のソナタを弾くように言われます。続く二次審査では15分程度弾くことになります。
途中でカットされますが、用意した曲をかいつまんで全て弾くと思った方がいいです。 そして最後の数分間は、初見課題です。小品の一部分を初見で弾きます。

修士課程はバッハ、古典、ロマン派、近現代の各時代をすべて含むように1時間程度プログラムを構成し、 学士過程の試験と同じく先生がその中から選んだ曲を、一次審査では5分ほど、二次審査では計15分ほど弾くことになります。

Q 詳しくありがとうございます。勉強や生活にかかる費用についても教えてください。

ドイツの教育機関が目安にしている学生の生活費の値は1か月あたり750ユーロ程度ということになっています。 ビザをもらうために用意する口座残高もこれを基準に算出します。

例えば1年間のビザをもらいたければ750ユーロ×12か月分=9000ユーロの口座残高を必要とするといった具合です。
実際生活するにしても、一か月750ユーロ程度を目安にしていいかと思います。

Q ヨーロッパに数年くらしてみて、どんなことを感じますか?

海外で生活すること自体大きな刺激です。
今まで一顧だにしなかったことを考えたり、固定観念にとらわれて、 日本では「当然」だと思っていたことが実は全く違っていたり、
と物事を見聞する視野が一気に広がりました。

その反面インターネットの普及やグローバル化のためか世界が一様になっているようにも感じます。
ヨーロッパのどこの国に行っても日本と同じようなマクドナルドがあったりと、
日本で暮らしていたようにこちらでも生活できる事は楽ではあるものの、
その土地の文化の色濃さに浸りながら生活することは
ベルリンのような都会では難しいかもしれません。

Q 最後に、留学を準備している桐朋生へのアドヴァイスをお願いします。

ドイツの教育機関のシステムは学校によって大きく異なり、その上ホームページなどの公な場所で細かく説明してくれない事もあります。
ですから細かいことは、学校の関係者と直接連絡を取り合い、事情を聞くことも正確な情報を知るために必要です。
入試の事や入学以後のカリキュラムについても、情報が錯綜することがよくあります。
留学している先輩を探し出して情報を得たり、 学校と直接コンタクトを取って常に正確で新しい情報を得たりする必要があるとおもいます。頑張ってください!


たくさん、今の様子を後輩のためにお話しくださり、どうもありがとうございました!

2014年11月22日

追記(2015年2月5日): 今回の入試からベルリン芸術大学の入試制度が若干変更になりました。

今まで日本で大学を卒業した者がBachelorで途中から編入することができたのですが、 今回よりそれがなくなりました。これはピアノ科に限ったことかも知れませんが、 大学卒業してから受験する人はもれなくMasterの入試を受けなければなりません。


※ここに記載したインタビューは、留学生個人の提供する情報で、現在の実勢と必ずしも一致するものでない可能性もあります。実際の留学に際しては、自身の責任において事実関係を確認してください。




インタビュアー・文責/大島 路子